はじめに:旅が教えてくれたこと
「心と身体は一つだけ」
この言葉の重みを、私は異国の地で痛感することになりました。
4年前、日本の病院で働いていた私は、明らかな心身の不調を抱えながらも、「休んでも良いよ」という先輩の優しい言葉にも関わらず、退職の決断に長い時間をかけていました。
そんな私が、アイルランドの田舎でわずか1ヶ月の間に経験した出来事は、自己愛の本当の意味を教えてくれた貴重な体験でした。
プロローグ:Connemaraの美しい田舎から始まった物語
2025年5月、アイルランドワーキングホリデーの始まり。
カウチサーフィンのメッセージから始まったのは、Galway県Connemaraエリアでの田舎生活でした。想像以上の田舎で食料品店も遠い場所でしたが、自然豊かな絶景に囲まれた美しい環境でした。
そこで偶然にも、近所の高齢者施設での仕事の機会を得ることに。履歴書も面接もなく、「明日から全職員対象のトレーニングに来て」という急展開。普通なら慎重になるところですが、「仕事を得られる機会なんてそんなすぐにない。少し働いて嫌なら辞めればいい」という軽い気持ちで始めることにしました。
この時はまだ、これから自分がどれほど大きな学びを得ることになるか、知る由もありませんでした。
第一章:理想と現実の衝突
衝撃的な労働環境
- 朝8時〜夜9時×週4日(12時間拘束)
- 無給の全職員トレーニング
- 重介助・全介助中心の激務
働き始めて2日目で早くも限界を感じました。カナダでの介護経験があったものの、ここは比較にならないほど重度の介助が必要な方ばかり。座る時間は食事介助の時くらいでした。
多国籍職場での孤独感
フィリピン人・インド人・アイルランド人の中、一人の日本人として働く現実。「一人の日本人として頑張っている自分を褒めてあげよう」と思わないと、やっていけませんでした。
第二章:HSPとしての限界 – 五感への容赦ない攻撃
繊細さが裏目に出る環境
- 嗅覚刺激: 喫煙、Vape(電子煙草)、制汗剤、香水の臭いで気分が悪くなる
- 聴覚刺激: 休憩中の大音量動画、アラーム音、入居者の叫び声
- 視覚刺激: 夏至近くで日没が22時過ぎ、光に敏感な私には辛い環境
呼吸器病棟で理学療法士をしていた私にとって、施設内の喫煙文化は特に耐え難いものでした。
ChatGPTとの対話から得た気づき
母国語ですぐに話せる人がいない中、ChatGPTに心の内を打ち明けました:
「あなたは今、HSPにとって”地雷だらけの環境”にいます」
この言葉で、私の繊細さは生まれ持った神経システムの特性であり、努力で根本から変えるものではないと理解しました。
重要な気づき:
- 「繊細さ」は変えられないが、「付き合い方」は育てられる
- 「自分を変える」より「自分を守れる選択」をしていい
- 環境が合っていないだけで、「壊れている」わけではない
第三章:権利意識の目覚めと決断
働いて3週間目、海外雇用に詳しい方に相談したところ、現状の問題点が明らかに:
- 雇用契約書を5日以内に渡さないのは違法
- 口頭のみでの労働条件説明も違法
アイルランドでは13週未満の雇用は退職通知なしでも良いと知り、決断の時が来ました。
6月27日、給料確認後に退職願を提出。マネージャーからの「人手不足だから困る」という引き止めに対し、私ははっきりと言いました:
「Short staff is not my problem(人手不足は私の問題ではない)」
同僚にこの言葉を話すと、「本当その通り!」と賛同してくれました。
エピローグ:4年間の成長の軌跡
日本時代の自分との対比
4年前の私は、先輩から「休んでも良いよ、一人欠けても会社は回るから」と言われても、退職の決断に長い時間をかけていました。
異国での成長
その辛い時期を乗り越え、自分の心と身体を守る大切さを学んだ私は、異国の地でハッキリと「NO」と言えるまでに成長していました。
約1ヶ月という短期間の勤務でしたが、「お金を得ても健康と時間を失う」という判断で退職を決断。ワーキングホリデーという限られた時間だからこそ、「無理に働くより楽しむ方が大事」という価値観を貫きました。
旅するセラピストからのメッセージ
すべての人に伝えたいこと
世の中には「しんどいけどお金のためになんとか働いている」人がいるかもしれません。日本の社会の仕組み上、難しいこともあるのは事実かもしれません。
でも、考えてみてください:
全ての人に平等であり、二度と戻ってこない時間を使用し、健康を維持できない働き方をして良いのでしょうか?
働き方・住む場所は無数にあっても、心と身体は一つだけです。
自己愛の本当の意味
この経験を通して学んだのは:
- 自分の権利を知り、守ることの重要性
- HSPなどの気質を受け入れ、それに合った環境を選ぶ大切さ
- 「Short staff is not my problem」- 組織の問題で個人が犠牲になる必要はない
- 自己愛とは、自分を甘やかすことではなく、自分を守れる選択をすること
おわりに:あなたも自分を愛してください
心と身体を整え、自分を愛し、向き合ってみませんか?
私も、まだまだ成長過程にいます。でも確実に言えるのは、自分を守る決断をする勇気を持てるようになったということです。
あなたの心と身体は、あなただけのものです。 大切にしてください。
この体験が、同じように悩んでいる方の心に少しでも届けば幸いです。
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